爽やかな話

近所の川原から、風に乗ってきたのか。羽虫が飛んだ。蚊よりも小さく1ミリ以下だと思う。網戸を素通りしているのか、窓の小さな隙間からなのか、家の中に入ってきた。たくさん入ってきた。読んでいた本に止まる。息吹で吹き飛ばした。

ふと、ちっちゃい頃、遠足の雪山登山で迷子になったことを思い出す。真っ白な道を歩きながら、死ぬ前にテリヤキバーガーをたらふく食べたかった、とか叫んでいた。

「そうなん?」

昔、冷蔵庫に長く置きすぎた、食べかけのバニラアイスの呪いだろうか。

「そうなん?」

落とし物をして、ほかのだれかにネコババされたときのような、たるい気持ちがある。もやもや悶々とした気分を爽やかにしたいからなのか、久しぶりに「爽」を食べた。

街に出ると人人人人人人人人人人。すごく混沌としていた。

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