非線形波動の書籍で目にして以来、Bäcklund変換に興味を持つようになりました。Bäcklund変換というものが、初めは全くピンと来なかったのですが、何とかBäcklund変換という概念が解るとはどういうことかを体感したいと思っています。
現在使われているBäcklund変換という言葉は、「Bäcklundさんの考えた変換」ということですから、Bäcklund変換という概念が解るために、
- Bäcklundさんの考えたこととは何か
- 変換とは何か
- 現在Bäcklund変換という言葉がどのように使われているのか
を取り上げてみます。
しかし、全てをこの場で取り上げることは難しいので、まずは、2の「変換」とは何かを考えることにします。
変換とはWikipediaによれば、
数学的意味での変換(へんかん、transformation)とは、点を他の点に移したり、式を他の式に変えたり、座標を取り替えたりすること。
変換 (数学)
とあります。また、引用元の写像という概念の記事を見ると、
写像(しゃぞう、英: Mapping, Map)は、二つの集合が与えられたときに、一方の集合の各元に対し、他方の集合のただひとつの元を指定して結びつける対応のことである。関数、変換、作用素、射などが写像の同義語として用いられることもある。
ブルバキに見られるように、写像は集合とともに現代数学の基礎となる道具の一つである。
写像
つまり、変換とは、何かから何かへ対応させることです。
例えば、
$$y=3\times x$$という式を考えます。この式は
$$x=5 \Rightarrow y=15\\
x=11 \Rightarrow y=33$$
のように\(x\)の値を決めると\(y\)の値を対応させることが出来ますので、数から数への変換となります。
また例えば、
$$栞さん \Rightarrow 魔法使い\\
アクターサイドさん \Rightarrow 戦士\\
クリスティーンさん \Rightarrow 女神
$$
であれば、人物から職業への変換となります。
この例だけでは、変換なる概念の何が有難いかは見えませんが、Wikipediaの記事にあるように、ブルバキという数学界の権威に「現代数学の基礎となる道具の一つ」とありますので、「変換」とは大事な考え方なのだと、一旦は思うことにします。
最後にFourier変換というものを取り上げてみます。これは、Fourierさんの考えた変換で、FourierさんのWikipediaの記事はこちら。
ジャン・バティスト・ジョゼフ・フーリエ男爵(Jean Baptiste Joseph Fourier, Baron de、1768年3月21日 – 1830年5月16日)は、フランスの数学者・物理学者。
Fourier
固体内での熱伝導に関する研究から熱伝導方程式(フーリエの方程式)を導き、これを解くためにフーリエ解析と呼ばれる理論を展開した。
そして、Fourier変換のWikipediaの記事はこちらです。
数学においてフーリエ変換(フーリエへんかん、英: Fourier transform、FT)は、実変数の複素または実数値関数を、別の同種の関数に写す変換である。工学においては、変換後の関数はもとの関数に含まれる周波数を記述していると考え、しばしばもとの関数の周波数領域表現 (frequency domain representation) と呼ばれる。言い換えれば、フーリエ変換は関数を正弦波・余弦波に分解するとも言える。
Fourier変換
すなわち前述と同じ書き方をすると、変換前の関数を\(f\)、変換後の関数を\(\hat{f}\)とすると、
$$f \Rightarrow \hat{f}$$
ですので、Fourier変換は関数から関数への変換となります。物理学や数学のいろいろなところに登場する変換で、別記事「エアコンの原理」で取り上げた拡散方程式や「Maxwellの方程式」から得られる波動方程式を解く時にも利用されているものです。因みに、拡散方程式と波動方程式は共に線形偏微分方程式と呼ばれる方程式の仲間です。
冒頭でご紹介した私がBäcklund変換に興味を持つきっかけになった書籍「非線形波動」では、タイトルの通り、「線形」ではなく非線形偏微分方程式が取り扱われていて、
したがって、逆散乱法は、Fourier変換法を非線形問題に拡張したものとみなすことができる。
岩波講座 現代の物理学〈14〉非線形波動
のように、そこではFourier変換を拡張した方法が使われています。Fourier変換を取り上げたのは、Bäcklund変換の理解の助けになるのかな、と期待したからですがうまくいけば良いのですが。
Bäcklundさんや後世の人々が何から何への変換を考えたのか。次の話題へと進んでいきたいと思いますが、変換という言葉をおさえたところで、本記事は閉めさせていただきます。
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